貴方と離れないといけない時が
ほら
もうすぐそこで笑ってる
教師終了イタリア修行
時間って、あっという間だな〜。
特にこの年になってから一年が早い事早い事・・・。
・・・・あ、今すごくむなしくなった・・・。
並森中に緊急講師として呼ばれて2ヶ月。
新しい先生も見つかって、私はお役ごめんとなることになった。
そう、もうこの幸せな時間ともお別れってこと。
「以上です。では、よろしくお願いします。」
「はい、わかりました。確かに、引継ぎ完了です。後はお任せください。」
ふわっと笑う綺麗な人だ。
きっと、すぐに人気者になるだろう。
荷物をまとめて職員室をでると、そこにいたのは例のごとく雲雀君。
やばいです。
今日限りで学校辞めること、言ってなかったし・・・。
両手に大荷物。
そして私の後ろには新しい先生。
・・・・・。
あ、今睨まれた?
「うほ!?」
予想していなかった急な展開に色気のいのじもない声を出してしまった。
いきなり腕を捕まれ、雲雀君に引きずられるように応接室へと連行されたんです。
バタン!!!
ドアの閉まる音ってこんなに大きかったですか!?
「優子、どういうことか説明できるよね?」
荷物はソファへと投げられ、体はドアに縫い付けられてしまった。
眼前にはものすご〜く怒った雲雀君の顔。
「え・・え〜っと・・・きょ、今日限りで学校を去ります・・。」
「なんで、僕に言わなかった?」
「・・・言ったら・・・残りの時間を楽しく過ごせる自信がなかったから・・。」
そう、彼に伝えなかったのはこれが原因。
もし、もう学校を辞めるの。
なんて口にしていたら、きっと昨日まで笑って過ごせなかった。
「・・・・僕の事、随分甘く見てるよね。」
とんでもないです。
「そんなこ「僕は風紀委員だよ?君の情報なんて筒抜け。」・・・い、いつから知って・・・?」
「半月前。」
あぁ、最初から知ってたんですね・・・。
「なんで「君から言うのを待ってたんだけど?」・・う・・・。」
それで最近微妙に不機嫌だったのね・・・。
「ごめん・・・。」
「・・・この後、どうするつもり?」
・・・ずっと、考えてた。
学校を辞めた時、どうするか。
また大学を休学してるただの引きこもりに戻るか、それとも・・・。
「・・・イタリアに行こうと思ってる。」
「何しに?」
「イタリア料理の修業に・・・。」
私はイタリア料理が好きだ。
特にピッツァ。
ずっと、イタリアに渡ってイタリア料理を学べたら・・と思っていた。
でも、お金がないし・・・修行させてくれる店も・・・と思っていたら・・・。
『それなら俺が店を紹介してやるぞ。』
というリボーン君の提案と、今回講師をしたお金があることから急遽、その夢が叶う事になった。
住み込みだから住む場所には困らないし、修行中も給料もらえるし・・イタリア語も少しずつ
勉強していたかいあって日常会話程度なら問題ない。
もともと日本に未練はないし・・・。
ただ、問題が一つ。
「僕から離れるっていうの?」
恭弥・・・。
「・・ずっと、行きたかったの。恭弥がだめっていっても、行く。」
これだけは、譲れない。
やっと、自分の道が見つかりそうだから。
「・・・そう、好きにしたら。」
・・・・え?
すっと、体に自由が戻る。
さっさと机に向かう恭弥はそれ以上、何も言ってこなかった。
一週間後。
「これが紹介状だぞ。厳しいからな、覚悟していけよ。」
「うん、ありあとうリボーン君。」
搭乗ゲート前。
見送りに来てくれたリボーン君から紹介状を受け取って鞄へとしまう。
あれから、恭弥と連絡をとらないまま出発の日が来てしまった。
今日発つことは、リボーン君にしか伝えていないから、見送りも彼だけ。
でも、これでいいんだ。
皆に来てもらったら、きっと・・・・。
「見送りありがとう、じゃぁ・・行くね。沢田君たちによろしく。」
「わかってるぞ。チャオ。」
「チャオ。」
さぁ、行こう。
このゲートをくぐって、新しい世界へ。
「!」
あ、今幻聴が聞こえたよ・・。
って!
「恭弥!!」
驚いて振り返れば、息をきらせた恭弥。
え?
どういうこと?
「な・・なんで・・・。」
「俺は邪魔だな。、頑張れよ。」
くるっと向きをかえて姿を消したリボーン君。
そっか、リボーン君が恭弥に・・・。
「っ!」
唐突に、息ができなくなった。
感じるのは痛いくらいの彼の腕の強さと、弾けそうなくらい早い彼の鼓動。
「・・・何かあったら、すぐに連絡しなよ。すぐに、行くから。」
耳元で聞こえる、1週間ぶりの声。
だめだ。
「うっ・・・恭弥ぁ・・・。」
「何泣いてるの、僕を置いていくんだから中途半端に帰ってきたら許さないよ。」
「うん・・うんっ・・・。」
[イタリア行き256便をご利用のお客様・・・]
「ぐず・・もう・・行かないと・・・。」
「・・・、 」
「お客様、ご気分が優れないのですか?」
「ひっく・・い・・いえ、大丈夫・・です。」
大きなエンジン音。
どんどん小さくなっていく景色。
なんだか、これが夢のように思える。
彼の言葉を聞いたときから、きっと私は魔法にかかってしまったのだ。
だって、どうやって座席についたか覚えてないし!?
・・・。
大丈夫、頑張れる。
どんなに厳しくても。
彼の最高の贈り言葉を胸に。
さぁ、踏み出そう。
新たな地へと。
これは別れではなく、私の我が侭なのだから。
『・・・、僕が18になったら君は永遠に僕から離れられなくなるんだから
今を楽しんでくるといいよ。愛してる。』
