いつも泣いていた私を抱き上げてあやしてくれたね。
すごく嬉しくて、抱っこして欲しくていつも泣いてた。
「頼む、私を独りにしないでくれ・・。」
大丈夫。
私はいつでもあなたの傍に。
























スミレ





























暑かった夏も過ぎ、秋が訪れて間もない頃。

私は久しぶりにセントラルの地を踏みしめた。

「はぁ、少し変わったな。やっぱりこういう都市は移ろいも早いね〜。」

荷物は鞄一つ。

長居するつもりもないし、ただ顔を見に寄っただけ。

さぁて、どこにいるのかな?



「どこにいるのさ色ボケー!!!!」

駅を出て3時間。

未だに目的の人物を見つけられず、イライラが絶頂に達して思わず叫んでいた。

あぁ・・引かないでください、皆さん。

私はただ疲れただけです、はい。

「おいおい、何叫んでんだ?」

降ってきた言葉に驚いて見上げれば金髪のお兄さん。

軍服を着てるって事は軍人だね。

「いや、少し疲れまして・・・。」

「はは、疲れると叫ぶのか?」

「えぇ、まぁ・・・。あの、つかぬ事をお伺いしますが。」

そうだ、軍人なら知っているだろう。

「ロイ・マスタングって人。知りません?」

「って、マスタング大佐のことか?」

「大佐?まぁたぶんその人で。」

大佐って、もうそんなのしあがったんだ。

野心だけは世界一っていえるしね・・・。

「・・・それなら、案内してやるよ。俺の上司だから。」

めんどくさそうに、でもどこか楽しそうに私をうながす。

くわえたタバコが少し持ち上がったけど、すぐに下を向いた。

器用な人。

とことこと、金髪の軍人さんのあとを着いていく。

良く見ると、背が高いし綺麗な青い目をしていた。

きっと、かっこいいという部類に入るんだろうな。

「ほら、この部屋だ。」

「え?」

ぼーっと、考えていたらいつの間にか着いていて内心びっくり。

コンコン

「ハボック少尉、戻りました。」

「入れ。」

あ、久しぶりに聞いたな〜。

声。

ガチャ

「大佐、お客さんっス。」

「客だと?」

ガタンと、立ち上がる音が聞こえて、少しして開いた扉から探し人が顔を覗かせた。

「・・・?君は・・・っ!!!?」

「あ、今一瞬誰かわからなかったでしょ。」

「いや・・、すまない。あまりにも美しくなっていたのでね。」

「黙れ色ボケ。」

「はは・・。ハボック、中尉。私は少し出る。後は頼むぞ。」

「大佐、仕事が「後で片付ける。」・・はぁ・・わかりました。」

え、なんかこれって迷惑?

「いいよ、仕事しなって。適当に待ってるから。」

「何を言う。久しぶりに会ったのだ。仕事など「いいからやれ。」・・・すぐに終わらせる。

 こちらの仮眠室で待っていなさい。」

くいっと、腕を引かれ部屋の中に引き込まれる。

言葉を発する前に奥の部屋に押し込まれた。

「もう・・・強引過ぎ。」

バタンと音をたててしまった扉に悪態をつく。

仕方なく、ベッドに腰掛仕事が終わるのを待つことにした。











・・起きなさい。。」

体が揺れている、と感じた後急速に意識が立ち上がる。

目を開ければそこにはどこか楽しそうな笑みを浮かべる男の顔。

「終わったの?」

「あぁ、終わったよ。待たせてすまない。」

どうやら眠ってしまったらしい。

久しぶりに柔らかくて、ふかふかのベッドに横になったからな〜。

うつ伏せに、枕に頭を預けたままボーっとしているとさらっと髪を撫でられた。

「疲れているようだ、早く帰ろう。」

「それなら送ってよ。宿とってあるから。」

「それならキャンセルしておいた。私の家に泊まりなさい。」

今、キャンセルっていいませんでした?

「は?」

「上着のポケットに宿の連絡先があったのでね。さぁ、起きなさい。」

こいつは・・・。

いつも、なんでもかんでも勝手に決めてしまう。

しぶしぶ体を起こし、上着を羽織る。

「荷物は?」

「もう車につんだよ。鞄一つしかないのか?」

「うん、明日か明後日には発つし。ありがと。」

目をこすりながら、前を歩く男、大佐さんについていく。

はぁ、この人が大佐ね〜・・・。

車に乗り込み、その揺れに体を任せながら運転するその顔を改めて観察する。

漆黒に濡れる髪に、オニキスを彷彿とさせる瞳。

象牙色の肌。

あいも変わらず女に持てそうな顔しくさって・・・。

くそ〜・・・女として悔しい・・・。

「顔に穴が開きそうだな。」

くくっと笑いながら車を寄せ、エンジンを止める。

どうやらついたらしい。

「いっそ開けばいいのにね〜。」

「おいおい・・。」




家の中は思っていたより綺麗で、散らかっていなかった。

というより、荷物が少なくて散らかせない、というべきか・・。

「寂しい部屋・・・。」

「仕事が忙しくてね。この部屋を使うといい。」

奥の部屋に案内され、私の鞄を机の上に置きさっさとリビングへ行ってしまう。

取り残された部屋の中で、なんとなく寂しく感じている自分に驚いた。




「あの部屋は気に入らないか?」

リビングに戻り、食事の支度を始めていたその後姿に抱きつく。

「・・・、危ないだろう?」

「ねぇ、ぎゅってして。」

「おやおや、は甘えん坊だね。」

こちらに向き直りぎゅっと私を抱きしめる。

ふっと、安心感が沸いてきてその胸に顔を摺り寄せてみた。

「ロイは会いたくなかった?私に。来たの迷惑だった?」

あなたの気持ちを確かめたくて、そう聞いてみた。

欲しい言葉をくれると、わかっているから。

「何を馬鹿な・・。会いたかったに決まっている。嬉しいよ、・・。」

もう3年近く会っていなかった。

「だが、連絡もせず何をしていたんだね?心配してどれほど探したと思っている。」

少し怒っているのか、声が変わった。

だって、ロイが他の女といちゃついているのを見るのが耐えられなかったから・・なんて言えないし。

「・・ごめんね、兄さん。」

こういうと、ロイは絶対に許してくれる。

そして、私がこれ以上踏み込まないで欲しいと願っているのをすぐに察してくれる。

「・・はぁ、いいだろう。さて、食事を作ろう。は休んでいなさい。」

「はーい。」

ソファに座って、傍にあった本を手に取る。

錬金術の本。

良くわからないし・・・。

・・・どうして、兄さんなんだろう。

どうして兄妹なの?

確かに絶対に切れない繋がりだけど、私はもっと違う繋がりを求めてしまう。

、どうした?」

本を手に思想にふけっていたら、隣にロイが座ったのにも気付かなかった。

慌てて本を押し返す。

「なんでもない、ご飯できたの?」

っえ?

「に、兄さん?」

今までにないくらいぎゅっと抱きしめられた。

驚いた体は言うことを聞いてくれない。

押し返さないと。

だって、このままじゃ苦しくなる。

、・・・愛しているよ。」

・・・ダメだよ。

嬉しくない。

「・・うん、私も。どうしたの?」

強張った体はゆっくりととけて、動かせるようになった手でそっと頭を撫でてやる。

「嘘ばかりだな。俺を愛してなどいない。」

俺って・・・やば、軍人からただのロイに戻ってる。

それは嬉しいことだ。

だって、ロイが素をみせる相手なんてそうはいないから。

でも、だめ。

このままじゃ、自分の気持ちを抑えられなくなる。

いい妹でいないと。

嫌われたくない。

たとえこの想いが叶わなくても、妹としてでもいいから傍にいたい。

「どうして嘘っていうかな〜。ほらロイ、重い〜!」

なんとかこの場をしのぎたくて軽い口調で抗議する。

早く放して。

早く。

「愛しているなら何故3年も連絡をしてこない。何故俺を避ける。」

はは・・完璧怒ってるよ・・。

こうなったら兄さんっていっても許してくれないだろう。

もういいや。

もうこの想いは抑えるには膨らみすぎた。

もう、割ってしまおう。

「・・ね、兄さんのこと名前で呼びたいって言ったときのこと覚えてる?」

「・・あぁ・・。」

「もう5年前になるんだね。あの日、私気付いたの。兄さんを愛しているって。」

「・・・・。」

「兄さんとしてじゃなく、ロイとして愛してるって。だから、名前で呼びたかった。」

「・・・・。」

「連絡もしないでふらふらしてたのは、嫌だったから。ロイが他の女といちゃついてるのをみるのが。」

あ〜ぁ・・・言っちゃったよ・・・。

もう戻れない。

でも、すっきりした。

「もういい?私行くね。もう会いにきたりしないから。・・妹でいられなくてごめんね。」

くっと、肩口をおして体を離す。

・・・って、離れない!!

「ね、放して!お願いだから行かせて「断る。」・・え?」

「断るといったんだ。行かせない。また俺を独りにするのか?」

「言ったでしょう?もう、私は妹でいられないの!妹扱いされるのが辛いの!」

「だから、ここにいろと言っている。俺も愛していると言っただろう?

  ・・妹としてではなく、一人の女として、という意味でいったんだ。」

・・・・何言って・・・?

「え・・?」

「ずっと、隠していくつもりだった。例え兄としてでも、傍にいられればそれでいいと思っていた。

 だが、行方を掴めなくなって・・やっと会えたと思えばまた出て行くという。」

「・・・。」

「もう兄としてつなぎとめられないのなら、男として繋ぎとめるつもりだった。・・嬉しいよ

 愛している。もう、俺を独りにしないでくれ。」

ぎゅうっと、まわされた腕に力が込められた。

そっか、ロイも私を愛してくれていたんだ。

ずっと、傍にいていいんだ。

妹としてじゃなく、女として。

「うん・・・ずっと、一緒にいる。一緒にいたい。」

「世界からは歓迎されることはないだろう。だが、何があってもを護るとここに誓う。」

「・・私も、何があってもロイを支える。」

こうして、私たちは兄妹から恋人という道へ足を踏み入れた。

きっといろいろな苦難があるだろう。

でも、いいんだ。

ロイがいてくれる。

もう、独りにならなくていいんだ。

ずっと、二人でいようね?








「ねぇ、お腹すいた。」

「そうだな、では食べよう。」

って、

「何してるわけ!?」

「服を脱がせて「飯を食え飯を!!」が食べたいのだよ。」

ずるい。

そんな事いわれたら、拒めないじゃん・・。

「・・・今日案内してくれた金髪の軍人さん、誰?」

話を逸らそう!

「ハボック少尉のことか?」

「ハボックさんっていうんだ〜。かっこよかっきゃっ!」

「・・・そんなに俺を狼にしたいのか?」

「ごごごごごごごごめんなさい。」



あぁ、なんかご飯はお預けみたいです。

神さま、私たちはあなたに背いたのかもしれません。

でも、あなたに私たちを否定できますか?

できないはずです。

だって、恋をする、という感情を与えたのは他ならぬあなたなのですから。

























あとがき

な〜にを書きたかったんだ自分!?