あなたのその手。

私だけを感じて欲しいなんて高望みなの・・・?






















一通オーライ

























「マスタング大佐ってどんな人がタイプなんだろう。」

「あぁ!?」

セントラルに住んで、中央軍部内で受付の仕事をして4年。

たくさんの軍人を迎え入れ、送り出してきた。

その中でも、一番私が心配している人の一人。

エドワード・エルリック君。

「エド君は知らない?」

マスタング大佐の部下で、国家錬金術師。

でもまだ子供。

気になって、何度も声をかけているうちにまるで弟のように思えるようになっていた。

エド君も姉のように慕ってくれている。

だから良く相談に乗ってもらうんだけど、今回はどうも彼の癇に障るものだったらしい。

「知るかっ。」

むすっと頬を膨らまして、これでもかというくらい不機嫌をアピールしている。

「クス・・可愛いな〜、エド君は。」

「誰が豆犬のようで可愛いだぁぁぁ!!!!」

「あはは、そこまで言ってないから。」

おかしくて、自然と笑みがこぼれる。

もうずっと、悩んでばかりで久しぶりに笑った。

「ったく。なんだよ、大佐のことが好きなのか?」

ふてぶてしくも、愛らしく。

不機嫌でも、ちゃんと相談にはのってくれる。

「うん、好き。」

「あいつなら女ならいいんじゃねぇの。」

「そんなことないと思う。」

確かに女性とみるやだれかれ構わず声をかけているけど。

どうも、本当に心を許している特定の女性はいないようで。

「大佐は確かにどんな女性にも優しいけど、本命っていうのかな。いないみたい。」

「なんでわかんだよ?」

ちょっと興味深そうにこちらに視線を送ってくる。

「みていると、なんとなく。どこか、寂しそう。」

「ふーん・・・。」

黙り込んで、何か考え込んでしまった。

こういうときは何を言っても上の空。

彼が答えを見つけるまで、コーヒーとカフェ独特の雰囲気を楽しむ。

どれくらい時間が流れただろう。

ふと、エド君は顔をあげ、どこかの悪大名のような笑みを浮かべた。

「エ、エド君?」

「いいこと思いついた。はさ、いつも大佐のこと気遣ってよく声かけてるだろう?」

「え?うん、多少は・・。」

「じゃ、それやめてしばらく大佐のこと無視してみろよ。」

・・・それって・・・

「嫌われちゃうんじゃ・・・「大丈夫、だと思う。」・・思うって・・。」

それでも、どこか確信に満ちた金色の瞳に圧倒される。

「・・・や、やってみる・・・。」





数日後






「大佐、になにかしたんすか?」

「いや、心当たりはないのだが・・・。」

受付嬢のは誰にでも優しく、みなを家族としてみているような暖かさがある。

その中でもマスタングという男には輪をかけてあたたかさが注がれていたのは誰もが知るところ。

当人のマスタングもの好意はすぐに気付いたし、どこか彼女に対しては他の女性にはみせないような

表情もみせるようになっていた。

それが・・・・

「ここ数日、あいつ絶対大佐のこと避けてますって。」

「ハボック、お前もそう思うか?」

突然だった。

いつもとかわらず朝受付で挨拶をすると、ものすごく!素っ気無かったのだ。

それが気になりマスタングも普段以上にに接する機会を設けたがことごとく逃げられている。

「はぁ・・・。」





「やぁ、一緒に食事でも。」

、奇遇だね。私もこっちに用事が・・・。」

、この書類なんだが・・。」



・・・・・

エド君にアドバイスをもらって、それを実行してみるとそれはとても難しいことだと実感。

何故か素っ気無くするようになってからさらに大佐と話す事が増えた気がする・・。

それはとても嬉しいけど、素っ気無く接する、と決めた今は辛いことこの上ない。

「・・・はぁ・・。」

、悩み事かね?」

「っ大佐!いえ、私はもう交代ですのでこれで失礼します。」

ぼんやりしていて大佐が近くに来ていることに気づかなかった。

う〜、顔が赤くなる・・。

やっぱり大佐綺麗な手をしてるな〜・・・。

カウンターに置かれた手をいつもみてきた。

時々手袋をしていたり、時々傷ついていたり。

でも、その手はいつもどこか優しさに溢れているような気がして。

そんな風に感じているうちに大佐のことが好きなのだと気付いた。

外見とか、そういうのじゃなくて。

にじみ出る優しさや、声、雰囲気。

ってなに考えてんだろう・・っ

「きゃっ!」

更衣室にはいってすぐ、誰かにすごい力で腕を捕まれ壁際に押し付けられた。

驚いて顔を上げた先にいたのは・・・愛しいあの人。

「大佐!ここ女子更衣室ですよ!?」

思わず反論してしまった。

って、

「クク・・・・。」

なんで体を震わせながら笑をこらえていらっしゃるんでしょうか・・・。


「すまない。普通、どうしてこんなこと!というものではないかね?」

まだ可笑しいのか楽しそうにこちらを見てくる。

「う・・そ、そうですか?」

なんだか恥ずかしいことを言ってしまったようで(でも正論)、思わず顔を背ける。

。」

名を呼ばれた、そう認識している時にあごに手をかけられ上を向かされた。

今まで、こんなに近くに異性の顔を見たことがあるだろうか・・・。

「った、大佐・・・。」

唇がふれそうな、至近距離。

大佐の顔、というより目しか見えない。

「どうしてそんな悲しい目をなさってるんですか・・・?」

その瞳に浮かんでいたのは深い、悲しみ。

「私は、君に何かしてしまったのか?何故私を避ける?」

すっと、細められた目に写っているのが自分だと思うと体温が急上昇していった。

「あ・・それは・・・。」

「それは?」

「エド君が・・・。」

「鋼のが何か言ったのだね?」

にわかに浮かんだ怒りの色の強さに焦りを覚えた。

どうしよう・・・。

なんかすごく怒ってる・・・?

「あ、いえ。その・・・・。」

私は全てを話した。

大佐を想っている事。

それをエド君に相談し、素っ気無くしてみれば、と言われたこと。




「つまり・・君は私を試したのだね?」

「た、試すなんてそんな!ただ、そうすればいいと、言われたので・・・。」

「ふ、鋼のに感謝しなければな・・。」

感謝?

その言葉の意味をしりたくて、顔を上げると満面の笑みの彼。

そして・・・

「・・・!!!!!た、大佐!?」

ちゅっと軽く触れるだけのキスをされてしまった。

「あ・・ファーストキス・・・。」

「君の初めてをもらえるなんて、光栄だ・・。」

さらっと髪に指を通しながら、あいた手で腰を引き寄せられた。

「どうして・・。」

「君を愛しているから、だが?」

嫌だったかね?

と、少し不安げに覗き込んできた彼の幼い表情に胸が熱くなった。

今、彼は私を愛していると・・・

「本当ですか・・・?」

「あぁ、私の傍に、これからもいてくれるかね?」

「はい・・。」

嬉しくて、彼の腕の中でたくさんないてしまった。

ずっと避けていたことを謝って、辛かったことを話して、泣きじゃくった。

「ふぇ・・・大佐ぁ・・・。」

「二人きりのときは名前で呼びなさい・・。」

「うっく・・ロイ・・・?」

「もう放さない。」

ぎゅっと強く抱きしめられ、彼の鼓動がわずかに感じ取れた。

その鼓動はとても早くて、それがとても嬉しい。

「クス・・・。」

「なんだね?」

「ロイ・・すごくどきどきしてる・・・。」

「・・・愛しくてやまない人に触れているのだから、仕方ないだろう?」

ありがとうエド君。

今度あったら、身長がのびるっていう運動があること教えてあげよう。

そしてロイとこうして・・想い合えた事も・・・・。




















おまけ






















ガチャ


「「!!??」」

「・・・大佐、なにをしていらっしゃるんですか?」

「ちゅ、中尉・・!いや、これは《ガゥン!》っ」

「問答無用です。女子更衣室への侵入及びセクハラで連行します。」

!頼む、弁明をぉぉぉぉ!?」

「ろ・・じゃなくて大佐!大佐〜!!!!」

ずるずるとホークアイ中尉に引きずられていった大佐は数日間司令部に監禁され、

昼も夜もなく働かされたのでした。


「中尉・・私はと「眉間と心臓とどちらがよろしいですか?」し、仕事します・・。」





「ふぅん、ま、うまくいって良かったな。」

「うん、でも大佐にはすごく悪いことを・・・。」

「でも中尉には説明したんだろう?いいんだよ、いつもサボってばっかなんだからさ。」

「う〜・・・・。」



がロイとデートできたのは、お互いの気持ちを打ち明けたあの日から1ヶ月後だったという。