夢の中で愛を誓った男性がいる。
黒曜の瞳に、黒髪のその人は私の幼馴染。























夢中永愛




















アメストリス国に永住しようと決めて4年。

やっとシン国から許可状が下り、アメストリス国に永住申請を申し立て

晴れてセントラルに引っ越してくることができた。

「長かった・・・でも、ここがセントラル・・。」

シンとはまったくといっていいほど違う世界。

錬丹術は錬金術と呼ばれ、軍事技術に特化しているようだ。

「・・・なんだろう、どこか懐かしい・・。」

疑問ではない。

だって、夢の中で何度もこのアメストリスの地を踏んでいるのだから。

、本当に一人で大丈夫デ?」

「大丈夫。」

シンでは夢占い師としてちょっと名のしれた私でも、この地で同じように占いだけで

食べていけるかは不安だけど。

夢占い。

私が相談者の人の体の一部に触れると数日内にはその相談者の夢をみる。

過去か未来か、それは自分の意志では見られないけれど大体は相談者の知りたいと

願っていることが夢となって私に伝えられる。

「では、我ラはシンへ戻りまス。」

「ありがとう。」

一通り荷物を部屋に運んでもらい、今まで助手としてそばにいてくれた者たちに別れを告げる。

「気をつけて。」

「あなたモ。」









もう5年前・・・・

私は自身の過去の夢を見た。

過去の私はまだこの国がアメストリスと呼ばれる前の時代に貧しい家の一人娘だった。

そんな私には生涯の愛を誓った人がいた・・・。







「レイ、何をしているの?」

「君に花を・・。」

「綺麗・・・。」


幸せだった時間は、長くは続かなかった。



「美しい、我が妻として迎えよう。」

「伯爵様、私には・・!いや!」

「拒もうならお前の家はどうなるか・・わかるな?」

「・・そんな・・・。」



その地でもっとも力をもっていた伯爵に気に入られ、私は幽閉された。

来る日も、来る日も伯爵に体を汚され、涙を流さぬ日はなかった。

伯爵の妻となる式典まで2日というとき、彼は私の前に現れた。


「レイ!どうやって・・早く逃げて。見つかったら・・・」

「−−−、大丈夫だ。・・私は君を愛し続ける。愛おしい−−−。」

「レイ・・たとえ体を奪われようとも・・この心はあなたを想い続ける・・。」

「・・この時代で叶わぬなら、新しく命を与えられる先の時代で君を探そう。出会えるまで、

 何百年かかろうとも。愛しているよ・・。」


2日後、式典の直前に私は自害した。

伯爵のものになることが耐えられずに・・。




「・・・彼がまたこの地に生まれているかなんてわからない・・。」

そして彼が私をまだ愛してくれているのかも・・。

それでも私はアメストリスにくることにした。

何故か・・あの夢を見た日からアメストリスに行かなくては・・という思いが日に日に強くなっていったから。

夢の中で何度も言葉を交わしたのに、私の名前だけは聞き取れなかった。

それでも、感覚は名を必要としなかった。

聞き取れなくても、聞こえていたから。



セントラルにきて2年。

私は夢占い師として占いだけで食べていけるようになった。

苦しい日もあったけど・・・。

「さて、今日の仕事は終わったし買出しにでも行きましょう。」

食器洗剤が切れていたことを思い出し家を出る。

少し歩くといつもお世話になっている日用雑貨屋が見えてきた。

ふと、もう終わるのだと感じた。

「・・・えっと、今日は・・・っ!「−−−!」」

買う物を確認しようとしたとき・・。

背後から強く抱きしめられた。

そして耳元で荒いと息に聞こえたのは過去の私の名前・・。

どさっともっていた鞄が地面に落ちる。

ゆっくりと、拘束する力を解きながら振り返ると黒曜の瞳が私を見つめ返していた。

「あ・・・レイ・・!」

それは、何度も見詰め合った瞳。

愛を誓い、再会を誓った瞳。

「大佐!なにしてるんスか!!」

大きな声にはっと我に返った。

そうだ、彼はレイという名ではない・・。

「あ、あの・・。」

「少尉、いいから先に戻っていろ。」

「中尉にどやされ「戻れ!」っはぁ・・。」

少尉と呼ばれた青年はどこか疲れたようにため息をついて車に乗ってさっていった。

「名前を、知りたい。」

すっと、真っ直ぐな瞳で私を見つめる青年。

あぁ・・ずっと、ずっと・・私は・・・。

。」

・・私はロイ・マスタング。国軍の大佐をしている。いきなり抱きしめて失礼を・・。」

「いえ、あなたは私を覚えているの・・?」

「いえ、ただ・・あなたをお見かけした瞬間体が動いていたのです。失礼ですが、どこかで・・?」

「・・・いいえ、人違いでしたわ。」

「そうですか、いや、本当に失礼しました。」

「いいのよ、お仕事にお戻りになってください。」

「はい、では。」

「・・・お会いできて嬉しかった・・・。」

私の最後の声は彼には届かなかった。

どこか釈然としないのかかぶりを振りながら歩いていく。

でも、これでいい。

「あぁ・・神さま、まだあなたは私たちを一緒にさせてはくれないのですか・・。」

彼は、ロイ・マスタングと名乗った彼はレイだった。

いや、レイの生まれ変わり・・。

彼にも私のように過去の記憶が魂に残っていたのか・・。

でもこれはきっと当然の罰。

もしあの時自害をせずに伯爵との生活をまっとうしていたら、きっとこうはならなかった。

「レイ・・いえ、ロイ。あなたを愛している・・。」














ロイside



「大佐、どうなさったんですか?」

「いや、ちょっとな。」

大通りで、鋼のがひと悶着を起こしもめているからなんとかしてくれとアルフォンスから連絡がはいり、

しぶしぶハボックと出た先で私は今までに感じた事のない感情があふれ出し、コントロールするまもなく

名乗った女性を抱きしめていた。

そして、覚えのない名を口にしたような気がする。

「大佐今日おかしいんスよ。疲れてんじゃないっスか?」

「だまれ、消し炭になりたいか?」

なにかを忘れている。

いや、落としてしまった・・?

・・・。」

「あら、大佐も占いに興味がおありなんですか?」

「占い?」

「はい、とは最近人気の夢占い師ですよ。」

夢・・・。

・・・・・・・・!!!!!




「−−−・・必ず探し出す。」

「レイ・・私も、あなたを・・・。」

レイ・・・?

私のことか・・?



「大佐!!」

「っ!今のは・・。」

「お疲れなのでは、倒れるなんて・・。」

レイ・・レイ・・・確かあの女性は私のことを・・

『あ・・・レイ・・!』

・・・!

「くそ!」

「あ、大佐!どちらへ!?」







「ここか・・。」



町の女性に声をかけ、彼女の家を聞き出すのは簡単だった。

古びたアパートの2階。

何もかも、拾いきった。

崩れ、バラバラだったピースが繋がる。

若い頃、何度も夢にみた。

美しい女性と愛を誓い合う夢。

部屋の前で一度息を整え、ノックをする。

・・・でない。

明かりはついていた。

!」

・・・・

ちっ・・・

思い切り扉を蹴破り、室内に足を踏み入れる。

そこは懐かしい香りに包まれ、まるで私を誘っているかのようだった。

!」

・・・・・返事がない。

リビングにも、浴室にもいない。

「寝室は・・ここか!」

勢い良くドアをあけると、古びたベッドの上に彼女はいた。

「・・・マスタングさん・・・?」

・・。」

ベッドの横に駆け寄ると、彼女はひどく衰弱しているのがわかる。

体を起こすこともできないのか・・。

「今病院に!」

「いいんです・・、どうしたんですか・・?」

そういった彼女はとても不思議そうに首をかしげ、その目には悲しみが滲んでいる。

きっと私がまだ気付いていないと思っているのだろう。

・・愛している。やっと、やっと会えたのだな・・。」

「っ!マスタ「ロイだ。」・・ロイ・・拾い集めたの・・?」

「あぁ、さっきは悲しい思いをさせてすまない。」

そっと、頭を抱き寄せ強く抱きしめる。

「・・・あのまま、忘れていて欲しかった・・・。」

「なぜだ!」

「・・・私は、こんなにも歳をとってしまったわ・・。きっと、あの時自害をした罰なのね・・。。」

「歳など!!私は君を愛しているんだ・・また私を一人にしようというのかい?」

「ロイ・・ごめんなさい・・愛しているわ・・。どうか、どうか私を許して・・幸せに生きて・・。」

そっと頬にふれた手は細く、体温が感じられないほどにまで乾いていて・・。

「許す・・?何を言っているんだ・・。私はいつでも君といられれば幸せだよ・・。」

「・・ありがとう・・一つだけ、我がままを・・言っても・・?」

「なんだい・・。」

「また・・こうして・・出逢えたら・・その時・・また・・愛してほしいの・・・。」

「何を・・私はいつでも君を愛しているよ・・また・・会えるかい・・・?」

自然と、涙が零れた。

「・・会えるわ・・きっと・・・きっと・・・・ロイ・・・・愛してる・・・・・・・・・。」

・・・?!」

彼女は私の腕の中で息を引き取った。

何度名を呼んでも、もう返してはくれない。

私はその唇にそっとキスを落とした。

・・きっと、また会える。その時こそ・・私が君を幸せにしてみせるよ・・。」









、享年102歳!?そんな歳には見えなかったけどな。」

「えぇ、とても若々しくてしっかりした人だったようね。」

「あ!大佐!みてくださいよこの記事。」

「ハボック、さっさと仕事に戻らんか!」

「いっ!イエス・サー!」

「どうなさったんです・・?」

「いや、なぜだ?」

「・・・目がはれています。」

「久しぶりに泣いたものでね。」

「何か「気にするな。」はっ」




、君は過去の分まで生きたのだな。

今生涯結婚もせず、ただ一人で。

私も結婚はしないよ。

君が私の妻となる日まで。

きっと、次生かされた地では共に生きられる。

共に幸せになろうではないか。

今はただ、君を想い生きるとしよう。

愛している。


























あとがき


なにを書きたかったかなんていわないで・・・
ただ、ふっと流れてきたんです。本当はオリジナルで書こうとも思ったのですが・・。
どんな姿になっても、愛を誓った二人には関係がないこと。
それを少しでも感じ取ってくだされば幸いです。