いつもすれ違っていた貴方に、いつしか惹かれていました。
あなたは私に気付いていますか・・・?
廊下×想い
「いい加減に諦めたら?」
同僚から本日何度目かのお言葉を頂戴する。
「いいの!こうやって想えるだけでも幸せなんだから!」
ここは東方司令部。
穏やかな時間が流れる暖かい日の午後のこと。
「もう2ヶ月でしょう?忘れられるとかそういう以前にあんたに気付いてたかも危ういわ。」
ぐさっと・・・どこからともなく矢が降り注いできた。
思い切り脳天にくらい頭がくらくらする。
「き、気にしていることを・・・。」
私の想い人はジャン・ハボック少尉。
2ヶ月前にセントラル勤務になってここを離れていってしまった。
私は直接部下だったわけでもないし、いつも廊下ですれ違うだけで声を交わしたこともなかった。
それでも、明日こそ声をかけよう!なんていっているうちに彼はいなくなってしまった。
今は後悔しかない。
「はぁ・・少尉・・・。」
「・・・そういえば、セントラルに重要書類を届ける人手がなくて困っているって大佐が
ぼやいてたわね〜・・・・?」
ガタン!!
「ごめん!ちょっと!!」
「はいはい、いってらっしゃい。」
セントラルに行けるかもしれない!!
同僚の言葉に気がせいた。
どうか、まだ見つかっていませんように!!
コンコン・・・
「・伍長はいります。」
ガチャ・・・バタン。
「どうした伍長、そんなに息を切らして。」
「あの!セントラルに運ぶ書類があるとききまして。私に行かせてはもらえないでしょうか!」
「ん?何かセントラルに用があるのかね?」
「・・・あ、いえ!そういうわけでは・・・。」
「ははは、伍長は嘘が下手だな。いいだろう。ただし重要書類だ、決して紛失したり
中を確認せんようにな。」
「はい!ありがとうございます!!」
こうして、私はセントラルに赴くことになった。
ありがとう!同僚A!!
翌日。
やったー!!!
久しぶりに少尉に会える・・・!
どうしよう・・・なんて声をかけたら!!
そんな事を必死で考えているうちにセントラル駅についてしまっていた。
「どどどどどどうしよう・・・き、緊張してききききた・・・。」
中央軍部門前。
この先に・・・このさきにぃ!!!!
はっ落ち着こう・・・スー・・・ハァ・・・
「そんなとこで何百面相してんだ?」
「うひゃぁ!!!!!!」
突如声をかけられものすごく変な叫び声をあげてしまった。
「!!わ、悪い。驚かせちまった。大丈夫か?」
おそるおそる振り向いた先にいたのはジャン・ハボック少尉その人だった。
「ハハハハハハハボック少尉!!!おおおおおお久しぶりです!!!」
緊張のあまり声が上擦り噛みまくる。
どどどどうしよう!!
まさかこんなに早く会えるなんて!!
しかも声かけられちゃったよー!!!!
「おう、久しぶりだな伍長。出世したな〜。」
・・・・・え?えぇ!?
い、今私の名前!!
それにどうして階級が上がったこと知って・・!!???
「ははははい!!仕事しか能がなくて!!」
「はは、何緊張してんだよ。今日はどうしたんだ?」
「ここここの書類!!を!!届けに!!」
「お、機密文書じゃねぇか。てことは軍法会議所の方だな。こっちだ。」
くるっと向きをかえ歩き出した少尉を慌てて追いかける。
「あああの!少尉はお忙しいのでは!!」
「ん?そうでもねぇさ。それより伍長って眼鏡だったか?」
「あ・・最近急激に視力が悪くなりまして・・!!」
そう、ハボック少尉がいなくなってからその寂しさを紛らわせたくて仕事ばかり
していたらいつの間にか視力が落ちてしまったのだ。
・・・わ、私!
少しだけ・・期待してもいいのかな・・・。
一度も話した事なくて、すれ違うだけだったのに・・・眼鏡のことに気付いてくれたなんて・・。
「そうか、眼鏡って面倒だろ。あ、ここだ。中の待合室で待ってな。」
「え!?あの、少尉!?」
すたすたと中に入っていってしまった少尉をボー然と見送り、言われたとおり待合室で大人しく待つことに。
10分ほどして少尉と、眼鏡をかけたお兄さん?が歩いてきた。
「よう、待たせたな。ヒューズ中佐だ。」
「やぁ!君かぁ!東方司令部から聞いている。書類を持ってきてくれたって?」
うひゃぁ・・・まさか中佐さんだったなんて・・!!
「はい!ここここれです!!」
「はは、そう緊張するなって!・・・・ん、確かに。ご苦労、伍長。じゃ。俺はこれで。」
「ども。」
「よよよよろしくお願いいたします!!」
後ろでに手を振りながら颯爽と歩いていったヒューズ中佐に敬礼をし、きちんと仕事をまっとうできて安堵する。
「良かった・・・ちゃんと渡せて・・・。」
「・・・伍長、この後暇だろ?ちょい付き合えよ。」
「!!よ、よろこんで!!」
ゆ、夢じゃないよね!?
少尉にさささ誘われた!!!
少尉に案内されたのは街から少し離れた小高い丘だった。
「こういう天気のいい日はここに限る。」
「でででも!これって・・・「そう、サボり。」あぅ・・怒られてしまいます!」
ごろんと木陰に横になってしまった少尉に少し慌てる。
だって!だって!かっこいいんだもん〜!!!!
「こっち、座れって。」
とんとんと自分の横をたたく少尉の姿に体が一気に熱くなる。
キャー!!!
「はははははい!」
言われたとおり、そっと横に腰を下ろす。
そこから見えた景色はとても素晴らしかった。
「うわー・・・いい眺めです!」
「だろ?誰にも教えるなよ。俺の秘密の場所なんだからな?」
えぇ!?
「あ、あの!どうして教えてくれたんですか?」
「・・・・・今回の書類運搬、自分から名乗り出たんだって?」
!!ど、どどどどうしてそれを!!??
「・・・ひょいひょい男についていくなんて無防備だぞ伍長。」
え?
ぐいっと、腕を引かれました。
そして奪われました。
唇と・・・・・・・・・・。
「!!!少尉!?」
「門前でみかけたときは、まじで驚いた。
中佐に話しきいて、わざわざ名乗り出てきたって聞いて期待しちまっただろ。」
しょ、少尉は何をいってるの・・!?
これは夢!?
「東方司令部で、よく廊下ですれ違っただろ?そん時いつも顔真っ赤にしてたし、もしかして
俺に惚れてんのか?とか自惚れてたんだぜ?なのにいつまで経っても声かけてこねぇし。
んでばたばたとセントラル勤務になって、離れてから後悔した。俺から声かけるべきだったってな。」
「わ、私!「好きだ、のこと。ずっと見てた。」・・少尉・・・。」
これは夢かもしれない。
だって、だって!ずっと想っていた人から好きだって言ってもらえるなんて・・・
「私も、ずっと少尉が好きでした。ずっとずっと後悔してたんです!声かければよかったって!」
「・・・は、何遠回りしてたんだろうな。俺達。」
「はい・・・。」
「今は敬語使うなよ。それからジャンでいい。」
「・・・ジャン・・・。」
「・・いつ戻るんだ?」
「あ、明日には・・・。」
「そうか・・。帰るときはくれぐれも大人しく!じっとして帰るんだぞ?」
「え?どうして?」
「あのなぁ・・お前いつもくるくる表情かわるわ人当たりいいわで・・よけいな虫がつきやすいんだよ!」
心配になるだろ。
そういって顔を少し赤くした少尉がすごく愛おしくて、思わず抱きついていた。
「大丈夫、ジャンだけだから。」
「・・・、まじ可愛い。」
ふえ!?
ぎゅっと抱きしめられこれでもかというほど体が密着する。
ドキドキと聞こえてきた彼の鼓動と、自分の鼓動が重なったような気がして嬉しかった。
長い長い片思いはこうして実った。
ずっとすれ違うだけだった二人は、いつしか同じ想いで、同じ後悔をして。
「遠回りだったけど・・・これからも遠回りがいいな・・。」
「なんで?」
「だって、たくさんいろんな事を一緒に感じていきたいから。」
「・・そうだな。俺も、そう思う。」
さぁ、もっともっと幸せになろうか。
二人で紡いでいく未来を信じて。
