眠れないときは散歩がいい。
夜の風もまた私を誘う。
月夜の妖精
もう夜中の1時を回った。
布団に潜り込んで2時間。
眠れません!!
「眠れない・・・体は疲れてると思うんだけど・・。」
誰ともなく一人ごちる。
・・・寝てる・・よね・・。
健全な子供だったらとっくに眠っている時間。
本当は、雲雀君にメールでもしたい。
だめだめ。
メールなんてしたらきっと会いたくなる。
我慢・・我慢!!
ガバッと布団を捲り、体を起こす。
「・・・散歩でもしてこようっと。」
眠れないなら、その時間を有効に使いたいし。
服を着替えて、部屋の鍵を確認し近くの公園へと足をのばした。
サァー・・・・・
「ん・・気持ちいぃ・・・。」
冷たすぎず、温すぎず。
心地いい風が流れる。
空を見上げれば銀色に輝く半月。
今は満ちていくのか、欠けていくのか・・。
1周りしたところで、噴水の縁に腰を下ろした。
「今何時だろう・・。明日起きれるかなー・・・ん?」
起きれるか、なんて心配していたらふと、目に飛び込んできた。
あまりの美しさに、一瞬妖精か何かかと思ってしまったがすぐに人だと認識する。
白銀の月光に包まれた少年が夜空を見上げていた。
まだ幼く見えるが・・彼は何をしているのだろう。
これも学校関係の仕事をしているためか、ついつい放っておけず声をかけてしまった。
「・・こんばんは、何、しているの?」
ふわっと、こちらを向いた彼は少し驚いたような表情を見せた後、柔らかな笑みを覗かせた。
「こんばんは!いやー眠れなくて。散歩でもすれば眠くなるかと思ってさ。」
二カッと笑った際に、キラキラと輝く髪が風に舞う。
金髪・・あ、これ地毛だ。
根拠もなくそう思う。
「そういうあんたは?」
「私も、同じ考えで・・。」
「はは、オレはディーノ。」
君は?とこちらに近づいてくる。
「私は。」
「、女一人で夜散歩はあまり薦められねぇな。」
困ったように笑う。
笑みを絶やさない人だなー。
沢田君に似てるかも。
「いいの、私なんか襲うような奇特な人はいないから。」
笑いながらそう言うと、彼は意外にも真剣な面持ちで私を見つめた。
あれ、笑うとこなんですけど・・・。
「無用心はいいことないぜ?俺が送るから早く帰ったほうがいい。」
・・・うぅ・・・。
そんな真剣に・・・。
「は、はぁ・・。」
ふと、1歩斜め前を歩く彼の背中をみながらある考えが浮かぶ。
初めてあった男の子についていくほうが無用心なんじゃ・・・。
「?ボーっとして大丈夫か?」
「へ?あ、うん、平気。あ、あのアパートだから。」
「へぇ、・・・ま、早く寝ろって。」
「ありがと、送ってくれて。」
ん?あれ、この人目の色もちょっと変わってる。
綺麗な色・・。
「おいおい、何見つめてんだ?」
「綺麗な髪と目だなぁと思って?」
「はは・・。あんま変なこと言うと襲っちまうぜ?」
「えー・・だって、本当の事だし・・。」
不思議な雰囲気を纏った人だな、と思う。
飄々としているけど、決して流されているわけでもなさそうだし。
軽そうに見えるけど、時折見せる表情からは芯の強さが垣間見える。
幼く見えたけど、案外年も近いんじゃないかとも思う。
「・・・また、会えるかな?」
「また夜の公園うろうろしてたら襲ってやるよ。」
「あはは、笑えないー。」
じゃ、といってきびすを返した彼が、夜の闇に溶け込むまでその姿を見つめ続けた。
今度眠れなかったら、また散歩をしようと密かに思いながら。
