小さな白い結晶が舞う夜に。


































小さな幸せ


























「寒い。」

塾帰り。
今日は久しぶりに遅くなってしまった。
いつもは9時に終わるんだけど、今日は先生が時間があるからと
一時間講義を開いていたので参加w
したらもちろん時間は10時。
はは・・。

「うぅ・・やっぱり帰ればよかった・・。」

といってもやっぱり受験生だし。
今のレベルじゃ・・・なんていわれるような大学を受ける以上、できるだけ努力しないとね!?

「遅い。」

「うひゃぁ!?」

寒い寒いと手をこすりながら誰もいない夜道を歩いていたら、突然背後からのお声。
それはもう驚きますよ。

「う・・心臓止まるかと思った・・・。」

呟きながらも振り返れば、そこには呆れ顔の彼。

「あんまり驚かさないでよ、冬獅郎君・・・。」

「俺を無視して通り過ぎるからだろ。」

「いや、素で気付かなかっただけです。」

「・・・・。」

思いっきりこちらを睨みながらすぐ目の前までやってきて、すっと手を伸ばしてきた。
頬に触れたその手は妙に幼くて、そして冷たかった。

「っ冷た!!」

「お前の顔は熱いな。」

不敵な笑みが怖い。
冷たい手が後頭部へとすっと回され、あっという間に抱きよせられた。
といっても、私のほうが背が高いから、彼の顔が私の肩口に埋ったって感じ。
それはとてつもなく可愛くて。

「冬君可愛い〜w」

「可愛い言うな・・。」

表情は見えないけど、きっと顔を赤くしてふてくされているんだろう。
ここが道のど真ん中という事も忘れて、ぎゅっと彼を抱きしめる。
暖かい。
これがギガイとやらで、偽物の体なんて思えない。

「ね、早く大きくなって私のこと抱きしめて?」

「っ言われなくてもわかってる。」

あ、今声がかなり不機嫌になった。
ぎゅっと腰にまわされていた手に力が込められた。
少し苦しい。
あぁ、男の子だな〜なんて思っていたら、ふと体が開放された。
そしてくるっと向きをかえて、彼は闇の中に吸い込まれていく。

「もう行っちゃうの?」

「遅くなると松本が煩いからな。」

「今日はキスもなし?」

「して欲しかったらお前から会いに来いよ。」

「うぐ・・。」

ひらひらと片手を振りながら、振り返ることなく闇に溶けてしまった。
真っ白な闇。
今日は小さな白い結晶が舞っていた。
だからかな、いつもよりも君を遠くに感じる。
でも、すごく近くにも感じるんだよ。
白い、白い闇。
白い、白い汚れなき君。
黒き衣をまとっても、血にぬれても。
君は美しいよ。


「冬、愛してるよ。」

「俺も。     」

独り言に返ってきた言葉に驚いて、近くを見回したけどどこにも姿は確認できなかった。
でも、すぐ耳元で囁かれたその言葉。

「うぅ・・ずるいよ・・。」

ドキドキとおさまらない心臓をうるさく思いながら、私は家へと歩き出した。
きっとまた、明日も会えるという不確かな確信を胸に。




『俺も。愛してる。』




















あとがき

今回は変換なしでささやかな幸せを目指してみました!!
久しぶりに書いた・・・。

冬獅郎「おい。」

玄米「うぎゃ!?」

冬獅郎「次は名前くらい呼ばせろよ?」

玄米「はい・・・。」