その日その時。
あなたが見つめていたのは私じゃない。
それでもいいと思った。
あなたの傍にいられるなら・・・

















儚き虹























風が欲しかった。

窓を全開にして夜風を部屋へと誘い込む。

あぁ・・なんて気持ちがいいんだろう。

部屋の電気を落とし、月明かりだけの室内でただ空をみあげる。

は何を思うわけでもなく、風に吹かれていた。

「こんな時間に何してるん?」

夜もだいぶ更け時刻は3時を回ろうとしている。

「ギンさん、ようおこしやす。ただ黙って入ってくるんは解せませんえ。」

客の前では決して己を見せてはならない。

遊廓で生きる以上、深入りは身を滅ぼすだけと身をもって知ってきた。

「はは、京言葉はボクんときは使わんて約束や。」

「そないなこと約束した覚えはありません。」

空から部屋の入り口に立つ男に視線を流す。

市丸ギンはソウルソサエティでその名を知らぬものはいないほど

名の通った男である。

その男が遊廓に入り浸っているという話はあっという間に瀞霊廷内で

広まった。

まるで伝染病のように。

「それより、ここにはもうこないでっていったでしょう?」

望みどおり、一枚仮面をはぐ。

「なんでや?ボクはに逢いとうて来てるだけや。」

ふわっと・・・ギンの大きく細い手がのあごを捉える。

細い目をさらに細くし、愛おしそうに首筋をなで上げていった。

「私は会いたくないって言ってるの。さっさと消えて。」

おお怖い、冷やかすようにギンは肩をすくめて見せる。

「それが本心やったら考えるわ。」

ドクン・・・

の鼓動が高まるのを楽しむかのように帯に手をかける。

は優しいんや。本心をいつまで隠すつもりや?」

びゅっという音とともに帯がの腰を離れる。

留めがなくなりゆるんだ着物のすそに手を差し入れながら、

あいた手で腰をつかみ引き寄せた。

「好きや。ボクのものになってぇや。」

どさっ・・・

畳に敷いてあった布団に組み敷く。

柔らかなうち腿をさすり、首筋にキスを降らせる。

「・・・少しは反応してくれてもえぇんちゃうの?」

刺激を与えても声一つ上げないに軽い苛立ちを覚える。

他の男に抱かれるときは妖艶に乱れるのを知っているのだ。

だが、ギンが抱くときは乱れない。

されるがままの人形のように。

「出て行って。」

そういったの目には感情はなかった。

「ボクの事どうして拒むんか教えたる。」

何が言いたいかわからない、そういいたいのか眉根を寄せる。

「怖いんや、好きで好きで自分を見失いそうになるのが怖いんや。」

ぴく・・・

の体が反応する。

「やめて」

「なんも怖いことはない。ボクはだけのもんや。」

「あんたに何がわかるっていうの!?」

「わかる。遊廓の女如きが市丸に近づくなんて汚らわしいみたいなこと

言われたんやろ。さっき女将さんに聞いたわ。気付いてやれんくて悪かった。

もうそんなことは言わせへん。」

違う・・・

は力なくそう呟いた。

何が違うんや。

苛立ちが募る。

「確かに言われるけど、そんなことはどうだっていい。でも、ギンが遊廓の女に

溺れた、腑抜けたって言われるのが嫌なの。」

零れ落ちる涙。

ギンはあっけにとられていた。

自身のことではなく、ギンの事に心を痛めていたことを気付けなかった。

「・・・、ボクのもんになってや。」

「何度言えば・・・っ」

「これな〜んや?」

の言葉をさえぎるように顔につきつけた紙切れ。

「あ・・・身請け書・・!」

「せや、女将さんもやっと折れてくれたわ。まったく人気すぎやねん。」

すっと、身請け書を布団の下にもぐりこませる。

「?なんで懐にしまわないの?」

「ん?今から脱ぐんに邪魔やん♪」

さっきまでの真剣さは微塵もなく、いつもと変わらない笑みを向けるギン。

「・・・身請けてくれるの?」

「当たり前や、いやや言うてももうボクのもんや。」

ちゅっ・・

「っぁ・・・」

不意の愛撫でに体が震える。

「やっと感じてくれたみたいで嬉しいわ。」

「う、うるさい・・!」

ちゅっちゅっ・・・ぴちゃ・・・

卑猥な音が室内を響かせる。

・・綺麗や・・・」

先ほどまで募っていた苛立ちは嘘のように晴れ渡り意気は揚々と心を弾ませる。

「ん・・っあぁ・・ギン・・気持ちい・・。」

「クス・・もう乳首ビンビンやね。淫乱やなは・・。」

「ふぅっ・・あ、恥ずかしい・・っあん・・ん・・」

耳元で囁かれた言葉に体は熱を帯びる。

煽るように言葉でも攻め立てながら脳の芯から溶かしてゆく。

誰にも渡さないと暗示をかけているかのようだ。

・・みてみぃ?もうココもびしょびしょや。」

「あっいや・・・あぁん・・ん、はぁ・・あっギンっ・・」

「指2本もくわえ込んで離さへん。いやらしい。」

くちゅ・・くちゅ・・と聞こえる音には気が狂いそうになる。

今までこんなにも感じた交わりがあっただろうか。

「どや?気持ちええならちゃんと言わんと。」

ぐっと指を奥まで押し入れられ一瞬息が詰まる。

「っあぁ!気持ちいい・・!んっあ・・気持ちいいよギン・・あっあっ」

「いいこや。そろそろボクも気持ちよくしてくれへん?」

その言葉にはけだるい体を起こし、ギンの着物を脱がせる。

すでに大きくそりたったソレは蜜を流している。

「っ・・」

「なんで顔そむけるんや?」

「ギンのまじまじと見たの初めてで恥ずかしいの!」

言い終わるとなにも言わせないというかのごとくギンの男根を

口にいざなう。

大きなソレをさすがに根元までくわえることは出来なかったが

先端を舌で刺激してやるとギンからわずかに声が漏れる。

「・・ん・・気持ちええよ。」

くちゅくちゅと口内に唾液をためソレに絡めて行く。

「もうイキそうやっ・・な?」

「だめ、行くなら私の中でいって・・?」

口をギンから離し上目使いに誘う。

「ええよ・・・」

ずっ・・・

「あぁっ」

・・・好きや・・」

ぐっと腰を押し付け一気にの中へと自身を推し進める。

の中は熱く柔らかく、そしてぎゅっぎゅっと締め付けてくる。

「ギン・・あっあっん・・・あぁ・・」

「はぁ・・気持ちええわっん・・・」

「あっあんっんっギンっあぁ・・あっだめ・・イク・・・」

「ボクもイクで・・中に出したるっ!」

「あぁっギン!」

!」

ドクンドクン・・・

自身の中で脈打つソレに体を震わせる

「あ・・すごい・・」

が可愛ええから興奮してもうたわ。」

ふっとみせたギンの笑みに心を揺さぶられる。

この人は自分のものだ、そういう実感がを強く支配した。

「ギン、ギンは私だけのもの?」

「そうや、がボクだけのもんのようにボクもだけのもんや。」

体を繋げたまま柔らかく抱きしめる。

やっと、の仮面をすべてはがすことが出来た気がした。

廓の世界で生きてきた彼女が身を守るために身に着けた仮面。

、朝になったらボクんとこ行こうな。二人で暮らすん。ええやろ?」

さらっと髪を撫でられる感触に目を細めながらは呟く。

「いいよ、私を離さないで。」








おまけ

「ここがギンの家・・っていうか屋敷?」

「違うわ、ボクとの屋敷やv」

「でっかい・・・あ、ギン身請け書もってきた?」

「もちろんv・・って・・」

「すぐにとってきて!!!」

「わ、わかった!(汗」

「まったく。」

慌てて遊廓に戻るギンを見つめながらは柔らかく、心から笑っていた。

ギン、愛してる。

あなたが私を目に映してくれ続けるなら私はあなたを支え続ける。

虹のように、幻ではないのに触れられぬ儚い心をあなたに捧げます。

























あとがき


ん〜、やっぱり少し裏というよりは微エロかな?という感じ。
これは表に置こうかな?